【2015】ぬむるす古都周遊記 3日目(4)live review

 メンバー達がステージに戻ってきた。HasseがMCで「Katalin、遠くからやって来た人達に温かい歓迎を!」と言ってくれた。外国から来る酔狂な人間達がちょっとだけ報われる時間であった(笑)。すると「Göteborgからも来てるぜ!」みたいな声もあがって、笑ってしまった。十分遠いよね。

 アンコール1曲目は"Someone Else's Fault"。これで新譜からすべての曲をやったことになる。イントロではアンプの不具合で、AntonとKjellの音がおかしくなっていたけど、すぐ持ち直した。弾むような軽快さが気持ちいいし、案外ライブ映えするんだなと思った。この曲は新譜リリース直後から演奏される機会があったので、バンドのアンサンブルが一番安定しているような印象を受けた。みんなでコーラスの練習をしたせいか、ヴォーカルハーモニーも、新譜からの曲の中では一番綺麗に決まっていた。1stからのバンドカラーと、新譜にもたらされた新しいコンセプトが程良くブレンドされた曲だと思う。「木に竹を接ぐ」的な展開もあるし(^^;)、でもVo.の息の抜き方は新譜ならではだと思う。Hasseは、「HFMCには、他のプログレバンドにはあまり見られないBluesとSoulがある」って説明していて、この曲はHFMCのその個性を最もわかりやすく表現している。後半からエンディングに掛けてのAntonのソロはリリカルで素晴らしかったなぁ。

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今回もハモりまくりで

 ちょっと物悲しいピアノのイントロから"Godsong"だ。これで最後か・・・。Hasseの哀愁を帯びたヴォーカルが泣ける。そしてじわじと熱くなっていく。Elenaは「ライブの終わりにしては不吉な曲だ」と、ライブレビューで書いていた。確かに歌詞はそうなんだけど(^^;)、曲の長さと盛り上がり方は、エンディングにもってこいなんだよね。(それについては彼女も異論がないようだ。)ちょっとQueenっぽいギターハーモニーを挟み、Hasseが希望を感じさせるように、高らかに歌い上げ、今日のライブは終わった。

 シンフォニックに傾倒した「HFMC」の曲が、ライブではどう響くのだろう?と想像できなかった。正直思いっきり不安だった。でも、実際は私が好きなハードでブルージーでヘヴィな要素がたくさん聴けて、バンドの成長を感じることもできた。前回はいろいろネガティヴな要素があって、ライブに入り込めなかったのだけど、今回はステージに没頭できたし、なによりメンバー達が楽しそうに演奏しているのが良かった。←これはいつもそうだけど。

set list:

  • Can't Stop the Clock
  • Venice CA
  • Everything can Change
  • Pages
  • Song for July
  • Genius
  • In the Warmth of the Evening
  • Life will Kill You
  • Something Worth Dying for
  • Fallen Empire

(encore)

  • Someone Else's Fault
  • Godsong

5月9日のPhoto(flickrへ移動します)

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I love you all!!

 「HFMC」の曲のいくつかはヘヴィな題材を扱っている。一方"Someone Else's Fault"の歌詞の、「みんな翼を広げ、空に届くことができる---失敗はすべて置いていけ、それは他人のせいで僕のせいじゃない」という、ものすごく無責任な歌詞の、ある意味やけくそな解放感が、アルバムの雰囲気をひっくり返していると思うのだ。すべては許されている---そんな脳天気で楽観的な達観。現実はそんなに甘くないし、そんな無責任な人間ばかりになったら、社会は混乱してしまう。でも、たまに見かけないか、すべて自分のせいだと自分を追い込む人を。悩んだところでどうにもならない事を一生懸命悩む人を。真面目で優しい人達を、正面から認めて包み込むような暖かさを、このアルバムから感じるのだ。その暖かさが、会場全体に広がっていったように思えた。

 ライブの後、セットリストをゲットして、それにサインをもらって回った。メンバーそれぞれ、今夜の演奏に満足しているようだった。Antonに「今日のライブは今まで見た中で一番良かったし、バンド全体がレベルアップしたよね。すごく楽しかった」のようなことを言うと、ニッコニコな顔をしてくれるんですよ。くそーかわいいなぁ。
 それから、JJ Marshと少し話ができた。それについてはWeblogに少し書いたので、そっちを読んでください。「2002年にSpellboundが新曲を作ったよね。3曲は持ってるけど、他にもあるんでしょ?あれどうなってるの?」と質問すると、デモという形にはなっていないが、録音物としては残っているみたい。「君に送るよ」と言ってくれたんだけど、忘れてるだろうな(^^;)。後で思い出したんだけど、前回会った2010年の時は、手の冷たさがとても印象に残っていた。今回はそういう感触はなかったな。とにかくBridge To Marsのデビューアルバムが楽しみだ。

 それからCalleと話をした。彼はHasseが自分のバンドを起こそうかと動き始めた時に、初めて"Fallen Empire"を聴いた人間の一人だ。HFMCのアルバムのThanksリストに名前が載っている。彼が「この曲を発表するべきだよ!」と背中を押してくれて、今があるのだ。元々Hasseとカヴァーバンドを一緒にやっていたそうだ。「彼の成功が嬉しいよ、だって僕が知っている人間の中で一番良いヤツだから。」と言っていて、それは私も激しく同意した。TFKのファンクラブや、自分のSpellboundサイトでインタビューを取ったり、ポスター制作の素材を頼むために、メールすることがある。私たちは業界人でも、プロの雑誌編集者でもないのに、すぐさま返答してくれるし、質問すれば誠意を持って返してくれる。他のミュージシャンとメール交換をしたことあるけど、彼らは大体きまぐれで、約束を平気で破る人もいる。その中でHasseの誠実さは輝いて見えるのですよ・・・。

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後ろから写真を撮っているのがCalle

 メンバーや来場しているミュージシャンたちと記念写真を撮ってもらい、ワイワイしているうちに時間があっと言う間に過ぎ、会場から追い出される時間になった。偶然にもElenaは、私とやよいさんが泊まるHostel Fyristorgに部屋を取っていた。Elenaは昼からずっと食事をしていなかったそうで、途中コンビニに寄って、食料を買ってから一緒に帰った。

 ホステルに帰ってから、一旦荷物をおいて、Elenaが私たちの部屋にやってきた。しばし雑談。彼女は去年の11月のSweden Prog FestでHFMCを観ている。その時はHasseのギターがトラブルで使い物にならず、急遽Antonのギター1本でライブをやったのだ。「正直、あの時はガッカリしたんだけど、今日はとてもよかった」と言っていた。同日そのライブを観ていたやよいさんは「あれは忘れて!」とフォローしてたけど、今日が満足ならよかった。InRockという音楽雑誌を作っているので、私が買ったSweden Rock Magazineを興味深そうに眺めていた。それから、こんなこと言ってたなぁ。「私たちの雑誌の読者は年齢層が高いんだけど、ある日文句を言われたの。『字が小さすぎて読みづらい』って。そんなこと、思いもよらなかった。」そ、そうかぁ(^^;)。
 そしてCDとかチョコとかいろいろお土産をいただいた。彼女は私が旅行先にくまプーを持ち歩いているのを、覚えていたのだろう。ロシア版「くまのプーさん*1 のサバ(ふくろう)のぬいぐるみをくれた。お腹を押すと何かロシア語で話してくれるけど、全然わかんない。帰宅してから、コレがしぶのツボにハマったらしく、今でも可愛がってる。

 良いライブを観た後は、興奮してなかなか眠れないものだ。しかし明日は、ある意味ライブ以上のイベントがあるので寝なくては・・・ ・・・ ・・・
夜中の3時に床についた。幸せだ~・・・。

 今日のビール:London Fog(Uppsalaの地ビール。何故Londonかは知らない)、Murphey's Ale

5月10日へ。

*1:ロシア版「くまのプーさん」は、ディズニー版とは全く違うキャラクターデザインのオリジナルアニメ。YouTubeで字幕付きのアニメが観られるので、探してみてください。かなり素敵。