【2012】ぬむるす瑞典縦断記 9日目(3)

The Flower Kings

 司会のおじさんがバンド紹介をしてから、メンバーが出てきた。1曲目は"Paradox Hotel"だ。HR/HM系が多く出るフェスだから、このオープニングはとても良いと思う。Hasseの声の状態は、心配するどころか1週間前より良くなっていた。Malmöできちんと休めたんだね。バンドのコンビネーションは、2006年に観た時と変わらないように思えた。新人初お披露目のせいか、わりと無難に演奏した感じ。曲が終わって、RoineのMCが入るが、残念ながらスウェーデン語なので何を言っているのか分からなかった。観客は各々聴きたい曲をステージに向かって叫んでいた。そういえば「Mike Portnoy!!」って叫んでたヤツが居たな。Transatlanticじゃないぞー。

 そしてホーミーのサンプリング。おー!"Last Mitute on Earth"なんて久しぶりだなぁ!HasseとRoineのヴォーカルハーモニーがきれいに決まる。テンポが変わった後のインストパートのTomasのユニークな音色のソロと、Roineの空へ抜けるようなギタートーンを聴くと、ファンの興奮度もアップ。Jonasのベースソロの後で"In The Eyes of the World"に繋がるメドレーにアレンジされていた。この曲は本当に久しぶりじゃないかな?Key.とG.のソロの掛け合いと、Hasseの情熱的なVo.の下で、Felixがヘヴィなドラミングの隙間に徐々に遊びを入れ始めてきた。エンディングに向かって熱く盛り上がった。

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Roine Stolt, Jonas Reingold

 再びMCの後、かわいいKey.のイントロ。"The Truth will Set You Free"だ。この辺で、今日はもうBest of Bestな選曲なんだな、と思った。ベースの流れるような演奏も健在だ。アコースティックギターが入るのをちょっと引っ張るようなタメがあって、それから叙情的なG.とKey.の掛け合い。これがないとTFKとして物足りないんだよね。うん。それからHasseの透き通る声が入る。徐々に演奏が盛り上がると共に声にも熱を帯びてくる。展開が変わった後の、厳しく張りつめた声もよく出ている。よしよし。いきなり飛び込んできた後ろのおねーさん達もHasseファンみたいで、それは大変嬉しいんだが、演奏中に大声で話したり笑ったりするのは勘弁して欲しい。聞き所だろ、ここ。サビのコーラスも清々しく決まって、"We will fight fire with fire"で拳を握っちゃうよ!その後のフリーなインストパートで、Felixの本領が発揮されてきた。バシバシおかずを入れてくるが、シンバルの細かい刻みに特徴があるような気がした。レイドバックしたRoineのソロタイムを挟んで、またしっとりとしたVo.パートへ。コーラスが本当に美しいなぁ。そのままKey.の漂うような音色の中で、Roineがギターを爪弾き、そのままパワフルなエンディングへ。うーん、素晴らしい。目から汗が出そうになった。

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Tomas Bodin

 ベースとドラムのフリーパートから"Babylon"へ。これもゆったりとレイドバックした雰囲気。お天気で気温が上がっていたら、ビールを飲みながらすっごく気分良く聴けたんだろうなぁと、ちょっと不埒なことを考えてしまった。ステージ上のメンバーの中には革ジャンを着ている人も居た。初めはKey.のみがメロディを弾いているが、徐々にg.も加わってハーモニーを作り出す。RoineとTomasの二つの楽器がお互いを高め合うような演奏をしているのを観るのが、とても嬉しかった。

 ベースがテンポをキープして、そのまま"What If God is Alone"へ。名曲だ。Roineの穏やかなVo.とHasseの爽やかなハイトーンVo.のコントラストがいい。シンプルだからこそ、表現力が問われる。演奏が消え入りそうなくらいヴォリュームを押さえる中、Hasseが語りかけるように"I can see beyond time..."と歌い続ける。徐々に演奏も歌も感情がこもってきて、"So don't you try"のロングトーンも素晴らしい伸び。HFMCの時、正直もう高音を出すのはきつくなってきたのかと思ったけれど、それに続く、ハイトーンのパートも歌い通した。惚れ直すぜ!ここでもちょっとウルッと来たがまだ感情が物体化することはなかった。

 曲が終わって、"I am the Sun!"と連呼するグループが居た。ステージではピアノとギターの伴奏が続いていて、ギターをアンプ近くに置いたHasseがまたフロントに戻ってきた。"Stardust We Are"だ。この曲には例のグループも不満はないだろう。Hasseは大きな手振りを添えて優しく歌う。沁みる、沁みるわぁ。HFMCのライブでも演奏したけれど、やはりTFKで聴きたい。HFMCでのアレンジが不満なのではない。私は、Hasse以外の人間がこの曲を歌うのが絶対許せないのだ。彼がTFKに居る限り、その役目を奪える者はいないからね(アマチュアバンドや個人のカヴァーは別だけど)。サビでは歌う人続出。わかるよー、歌って泣きたいわー(まだまだ大丈夫)。後半のインストパートでは、Roineのギターの陰で堅実に曲を支えるJonasのベースと、ちょっと遊び始めたFelixの手数の多いドラム。姿はZoltanっぽいと言ったけれど、スタイルは、前任者を例えにするならJaimeのヘヴィさとMarcusの手数を足したような感じだろうか。

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Hasse Fröberg

 拍手喝采の中、今度はHasseのMC。やはりスウェ語。そして"There is More to This World"。この曲は、新任者が初めに覚える曲なのだと、以前何かのインタビューで読んだ。なので、古い曲だけど演奏頻度は意外と高い。Roine、時々歌いづらそうに見えたのだけど、音のバランスでそう思ったのかもしれない。しかし演奏はテンポ良く、Hasseのタンバリンも小気味よく。Hasseが初めに"See how we run the field..."と歌って、他のメンバーも入ってハーモニーで作り、テンポもアップする4回目の"See how we run the field..."を聴いた時に、ついに涙腺がもたなくなった。もう、はらはらと。これが聴きたかったんだよー、ずっと待ってたんだよー(T_T)。5年前に出たアルバムから、どうしてか彼らのやることに興味が持てなくなっていた。このままファンやめるのか、それでいいのか?と、常に居心地の悪さを感じながら寄り添い続けたような日々。HFMCがあるからもういいじゃん、遠くから見守ろうとも思った。古い曲を演奏しているから感動しているんじゃない。今彼らが再び集まって演奏しているその姿と音から、この輝くようなパワーを彼らから感じたかったんだ。Hasseも絶好調じゃないか、良かった、よかったよぅ(号泣)。

まだ続きます。