【2015】ぬむるす古都周遊記 3日目(3)live review

 新譜「HFMC」と同様、時計がチクタクと時を刻む音から始まり、可愛らしいキーボードのメロディが流れてきた。この部分はサンプリングのようだ。Hasseが「イェー!」と観客に気合いを入れて、激しいイントロのリフが入ってきた。少しテンポは速めかな。CDで聴くよりずっとハードで、個人的には「よしこれだ!」とガッツポーズ。スタジオ盤の音はkeyが全面に出ていて、慣れるまで苦労したので、ギターがよく聞こえる位置(AntonとHasseの間)で良かった。
 この曲ではカメラをいじらず、ステージに集中した。HasseのVo.やコーラスの音程がよれてる部分があったが、"I've got it in my blood..."の部分で少し落ち着いてきた。その後の、HasseのVo.がフェードアウトしながら、インスト隊が切り込んでいくパートはどうするんだろう?とずっと不思議に思っていたのだけど、そのままストレートに繋げてたな。ゆったりとしたギターソロから、間髪入れず"Venice CA"。2012年に観た時より溌剌とした印象があった。サビではHasseが観客に手拍子するように煽る。Olaがスタジオ盤にはないオカズをちょこちょこ入れてくるのが楽しいし、ツインギターソロも良いな。それに繋がるギターソロも、テクニカルな技をバンバン決めるAnton君。もっと真ん中に出て弾けばいいのに(^^;)。

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一番成長を感じられたAnton君のギター

 ここで短いMC(暑いね、とか言ってたのかなぁ)を挟んで、"Everything can Change"。Vo.のエコーが効き過ぎてるのがちょっと気になったが、2番に入ると少し抑えめになった。4/4 - 3/4 -5/4とめまぐるしく展開するのだけど、歌詞と上手にマッチしていて、それほど「変拍子!」な感じはしない。ジャジーなAntonとKjellのソロは、大体スタジオ盤と同じプレイだった。

 MCはスウェーデン語で行われるので、数字や僅かな単語しか分からないのだけど、この時近くにいたJonnaが「ティーンエイジャーの時みたいに緊張してるよ、って言ってるわ」と教えてくれた。

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絵になる〜

 そして"Pages"。荘厳なイントロからギターのアルペジオ、フルート(の音色)とベースの絡み、そしてHasseの歌が静かに入ってくる。この辺からバンド全体の演奏がまとまってきた。この曲ではHasseはギターを弾かない、というのがとても意外だった。去年のSweden Prog Fest(後述)の反省だろうか?スタンドもなく、マイクを握っただけの彼の姿は、今でもちょっと見慣れない。中盤の"Make a stand make a real decision..."辺り、コーラスとリフの掛け合いからギターソロへと勢いが増してきて、ツインリードの所ではOlaがツーバスを踏んでいた。HFMCでツーバスを聴くのは初めてじゃないだろうか。その後のKjellのテクニカルなソロが、更に曲を勢いづけた。そして、アトモスフェリックなシンセをバックに、Antonが情感たっぷりのソロを披露した。以前はRoineを意識したのか?と思うようなトーンだったけど、このアルバムでは彼なりの色が出てきたように思う。この間に、Olaがドラムから出てきて、12弦のアコースティックギターを持ち、マイクの前に立った。ここでもHasseはギターを持たず、ハンドマイクで歌い続けた。OlaのギターとKjellのピアノをバックに、二人が歌を掛け合う。"Died a little with you day by day..."のパートを、ステージでこう再現するとは予想もしていなかった。ここはじんわり泣けましたよ・・・。"I hope you're staying at a better place..."のフレーズを、Hasseが一回余分にリピートし、その間にOlaがドラムに戻っていった。この演出、予想外で良かった!"I love you all---!!"とHasseがシャウトして、曲は最後までハードに盛り上がり、観客も惜しみない拍手を送っていた。

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ギターを弾くOla

 観客と短いやりとりした後は、軽快な"Song for July"を演奏。新譜の曲は集中して演奏しないといけない曲が多いので、他のアルバムからは、リラックスできるような曲を選んだのかな。1stの曲なので、演奏に余裕が感じられる。KjellとAntonのバッキングがキラキラしててステキ(意味不明)。みんなスタジオ盤とは違うオカズを放り込んでくるので楽しかった。あとラストにかけてのKjellのジャジーなプレイが曲を締めていた。
 そのまま"Genius"。ゆっくりと、言葉をかみしめるように歌うHasse。かの天才と謳われたヴォーカリストの悲劇を悼むようだった。"In the end you couldn’t keep up the fight..."から、Vo.のメロディとギターのメロディが微妙な距離感で絡んでいるのに気が付いた。スタジオ盤では聞き逃してたなぁ。エモーショナルなHasseの歌を堪能できて満足。曲が終わると見せかけて、そのままリフを弾き続けながらMCとメンバー紹介。各々短いソロプレイを挟みながら、まずはベースのThomsson(「ものすごく古い友人」って感じの紹介)。その後はOla、Anton、KjellとHasseが紹介し、Hasseの紹介はThomssonが担当した。Hasseも短いギターソロを演奏して、再び曲に戻った。
 新譜の流れ通り、"In the Warmth of the Evening"へ。アルバムで聞ける曲の繊細さを一番再現できていたのは、この曲のパフォーマンスだったと思う。力みなく語りかけるように、Hasseは「大切な場所」を慈しみをもってに歌い上げる。ふくよかなギターの音色が心に沁みる。ちょっと走る傾向があるバンドの演奏も、この曲ではどっしりとしていて、バンドの成長が実感できた。

 グッズの宣伝MCの後、The Flower Kingsの「Paradox Hotel」に収録されている"Life will Kill You"。Kjellのオルガンが唸りまくる!レゲエっぽいけど7拍子という、Hasseの妙なセンスが光る曲である。Antonのソロは原曲を考慮しつつも、彼なりにひねったフレーズを弾いていた。ギターを持たないHasseのハーシーなVo.と、Kjellのオルガンがえらく渋くてヘヴィな雰囲気を出していたのだが、エンディングは"The Chosen One"の最終パートに取って代わられた。清々しいAntonのギターソロ、物凄く雰囲気が違う(^^;)。この「唐突で異質なものへの展開」って、このバンドの特徴だと思うんだ。

 "Something Worth Dying For"は、正にライブ向けの曲で熱かったわ~。ヘドバンしまくりましたね。あとThomssonのベースがね、Jonasみたいに変態テクニカルなフレーズはないけど、着実に土台を固めているし、時々控えめに、ツボを突くフレーズを入れるんだよね。それに、弾いてる姿がそれがいちいち絵になるんだ。ロックのライブは、見た目のかっこよさも大事よ。

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絵になる〜 その2

 Antonの高速プレイも最高だった。メモ帳には「Anton君祭だ!」と書いている(笑)。彼の技術は完璧ですよ。凄腕なのに「オレこれだけ弾けます!」ってアピールがなくて、微妙に端で弾いている姿がまた何とも(^^;)。彼は元々、Paul GilbertやJohn Petrucciのようなモダンなギタリストの影響が強かった。しかしHFMCに入ってから、他のメンバー達の趣味もあって、少し違うスタイルを吸収していったのだろう。この曲のリフなど、微妙にAlex Lifesonっぽいよね。

 最後は"Fallen Empire"だ。やはり1stの曲には余裕を感じるな。他のアルバムの曲の演奏難度が上がってる、とも考えられるけど。静と動のコントラストがダイナミックで、Hasseのラフな声と繊細な声を楽しむことができる。全体的にグルーヴがあるので、やはりライブ向けだと思う。ツインリードも美しく決まって、ちょっとRushの"Xanadu"っぽく曲を締めた。

 あっと言う間にアンコールですよ。まだ聴きたい曲があれとかこれとか!

長いけど続きます。