【2006】ぬむるす英国徘徊記 4日目 (2)

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Clapham Common

 Nothern線で南下し、Clapham Commonで下車。Aちゃん曰く、ゲイが多く住んでいて治安が良い街らしい。つまり、男性同士のカップルは比較的経済的に豊かなので街が荒れることが少ない、と言う理屈らしい。駅から歩いて数分、大通りから一本プライベートエリア入った場所にある彼女が住むフラットは、元々お金持ちの邸宅なのだが、1フロアに何世帯も暮らせるように改装されている。でもトイレ・バスは共有だって。事前にそう聞いたので、昔の日本の下宿みたいな狭いイメージを持っていた。実物を拝見したら、確かに面積的にはあまり広くないのだけど天井が高いので圧迫感がない。その高さを利用して、ボーイフレンドのP君がロフトを作り、そこをベッドにしている。

 フラットに到着し荷物を置いてから、歩いて数分で大型スーパーへ買い出しに行った。今日はローストチキンをごちそうしてくれるそうだ。ビールやワインや、いろんな野菜、そして鶏丸ごと!いやーそんなのクリスマスシーズンしか見かけないよ!スーパーの雰囲気は日本と大して変わらないが、BGMや売り込みのアナウンスが全くないのが、ワタクシ的には好印象だった。例え売り物の小麦粉の袋から粉が漏れていても。

 レジと言えば、かごの中身を客自身がコンベアへ乗せ、それをレジ係が会計するという仕組み。お酒が含まれていたので「IDを見せて」と言われた。Aちゃんが運転免許証を見せると「あら私と同じ年よ!」とレジ係の態度が一変(笑)。しかしきちんとIDを確認するところは素晴らしいな。

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鶏とAちゃん。大きさが分かっていただけるかと。

 Aちゃんが食事の支度をしている間、私はパソコンを借りてmixiや普段で入りしているBBSとかブログを巡回。私やAちゃんが普段つるんでいる、高校時代からの友人グループ内のBBSでは、毎年恒例の忘年会の話が着々と進んでいた。そのうちP君が仕事から帰宅。しばらく見ないうちに恰幅がよくなりましたね(^^;)。Aちゃんが作っているチキンの焼き具合や付け合わせの野菜について、なにやらリクエストをしている。料理にうるさい旦那さんは大変だな。そこでAちゃんが「ももちゃんの旦那さんは料理するのー?」と聞いてきたので「殆どしないけど、何も注文しないよ」と言うとP君は黙ってしまった(笑)。

 私が今回バンドを追っかけてイギリスに来たことを知って、「どんなバンドなの?」と尋ねられたので、パソコンでTFKのサイトへ行って、サンプル音源を聴かせてみた。"Rumble Fish Twist"は「とても実験的」で、"The Flower King"は「普通の良い曲だよねぇ」だそうで。プログレに縁がない人の意見は新鮮だなぁ!でも総合すると、結局「どんなバンドかよくわからない」んじゃないかと思う(^^;)。

 それからP君がiTunesに入っている自分のお気に入りの曲を色々聴かせてくれた。彼はパンキッシュでポップなバンドが好きみたい。The White Stripesと、そのメンバーJack WhiteのバンドThe Raconteursの名前が良く出てきた。私が一番面白そうと思ったのはIan Duryというミュージシャン。ほどよくご機嫌でファンキーだけど、バカ騒ぎしているのではなく、どこか斜に構えてる感じ。バックの演奏も格好良くて、ベストアルバムがあったら買おうかなと思ってる。

 さてオーブンにチキンを入れてどれくらい経っただろう・・・P君は焼き具合にようやく納得がいったようだ(^^;)。既に何杯かビールを飲んでいるのだけど、新しくつぎ直して乾杯!この時チキンにかけたグレイビーソースは、パブの食事で出てきたようなどろっとしたソースではなく、鶏の脂と香味野菜とスープを煮込んだ程度のさらっとしたソースだった。ドロドロソースは粉末を水で溶いて作るインスタントらしい。

 ある程度食べ進んだところで、友人達から預かってきた誕生日やクリスマスのプレゼントをAちゃんに贈呈。Aちゃんや私がそれらを見て「カワイイ、カワイイ」と連発するのでP君が不思議そう、というか面白がっていた。あと同意を確認する「ねー?」もマネしていたんだけど、やはりイントネーションが違うのだよ。

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プーもディナー中

 食後のパイも平らげて、満腹になったところで「外へ飲みに行こう」とP君が提案。そのお腹はそうやって大きくなったのですね。

 雨は上がっていたけど、さすがに寒くて吐く息が白かった。大通りを挟んだ公園の向こうにあるパブへ入った。名前のPAWは「Princess of Wales」の略って本当?

 冬休みの話から日本の労働環境の話に展開して、休みは少ないし報われないし、どうして平気なの?と言われてしまう。確かに日本人は働きづめだけれど、だからって幸せじゃない、とは言い切れない。世界的に見てもかなり安全で恵まれた生活環境と商業的なサービスを手に入れている。私たちはとても受動的な民族だから、イヤだと思っても変えようと立ち上がらずに身を任せてしまうけれど、その中に幸せを見つけることもできる特技を持っている。そう思うのだけど、今私自身はかなり気ままな生活を送っているので、日本の企業戦士達の心境は代弁できない。ニュースを見れば毎日、壊れた人間の痛ましい事件を目にする。酔っぱらった頭であれこれ考えて、「思うに、P君は日本では暮らせないってだけだよ」と言い、Aちゃんに通訳してもらうと、P君は何とも言えない顔をしていた。

 部屋に戻り、寝る準備。この部屋の周りにはバスルームは二つ、トイレ+シャワールームが一つあって、Aちゃんお気に入りのバスルームでお風呂の使い方を教えてもらう。バスタブは広いし、お湯はちゃんと出るので機能的には問題なし。でも天井が高いのでなかなか部屋全体が暖まらない。高けりゃいいってもんじゃないんだな、と身をもって実感(笑)。

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昔の貴族の館を改装してフラットにしているので、時々無理がある。

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広すぎてフレームに収まらないバスルーム

 部屋に戻ると、明日も仕事がある二人は既にロフトで就寝していた。私はロフト下のソファーベッドで、TFKの「Paradox Hotel」を聴きながら、今回の旅の写真を見返した。かなりビールを飲んだので頭がもうろうとして、眠りに落ちるには時間が掛からなかった。

 夢のような旅もあと一日。明日は自然史博物館により、そのまま空港へ向かう。

 

 次の日へ。