【2004】ぬむるす花王巡礼旅行記 6日目 (1)

5月30日 晴れ、時々にわか雨

 今回の旅のメインイベントは終わってしまったが、私個人には素敵なオプションが残っている。今日はLars Hollmer氏のChicken Houseを見学できるかもしれないのだ。しかし、緊張の糸が切れてしまったのは私だけではなかったようで、元々のどの調子が悪かったやよいさんもドッと疲れが出て、声が出なくなってしまった。今までとても負担をかけてしまっていたので、今日くらい私一人で行動しないと・・・できるかな(汗)。

 朝食を摂った後はやよいさんはそのまま部屋で休み、私は一人でUppsala観光。BGMはSolid Blueの「Vol.III」。人通りが少ない日曜の街に、このシンプルなロックンロールはとてもマッチする。

 そうそう、このホテルのエレベータは手動扉。欧州大陸では割と普通だとやよいさんは教えてくれたけど、すご~い新鮮!

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開き戸。トイレではない

 スウェーデン第4の都市といいながらも小さい街なので、Uppsala大聖堂とお城くらいしか観るところがない。地図がなくても尖塔を目指して適当に歩いていたら大聖堂に辿り着けた。

 150年の年月をかけ1435年に完成した大聖堂の尖塔の高さは約120m。以後700年以上に渡りスウェーデン大司教の本拠地となっている。1702年に火事で一部を消失したが、何度か再建と改築が加えられた。16世紀のグスタフ・ヴァーサ王とその王妃、植物学者のリンネの墓がある。

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ありがちなアングルですが、やはりこの位置かと

 今まで海外で何度となく教会に入ったが、Bruges(ブルージュ・ベルギー)の聖母教会に匹敵する、ワタクシ的に1,2を争う大きさかも。天井の唐草模様や淡いステンドグラスなどに北欧らしいシンプルで清潔感ある色使いが見られた。シンボルとなる内陣や袖廊の一番大きな窓などには色の濃い、絵画的なステンドグラスが組み込まれている。聖歌隊の練習をBGMに、写真を撮ったりスケッチをしている間に11時の礼拝の時間になってしまい、出るに出れなくなってしまった。

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聖ラーシュ門のステンドグラス(多分)

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セバスチャン礼拝所辺り

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聖歌隊練習中

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ヴァーサ礼拝所内陣の大十字架はクリスタルで飾られていました

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ポーチから大聖堂にはいる扉の両脇を飾る民族和解の木
Uppsala出身の芸術家がデザインした燭台です

 自分は宗教色が強い家庭に育ち、幸い親がそれを強いることはなかったけれど、その反動で宗教に対しては距離を置くようにしている。仏教は宗教と言うより生活哲学。人格を持った神様は信じない。物に宿る精霊みたいな存在はいると面白いな。でも「神様はいる、天国はある」と信じることによって救われる人達がいるのなら、それはそれで良いと思う。この壮麗な教会はきっと民衆の血と涙とお金によって建てられたもので、陰では貴族や司教達の汚い権力争いがあったかもしれない。今行列を引き連れてやって来る緋衣の人も、何考えているか分からない。それでもこの教会を訪れ、日常の喧噪から離れて祈りを捧げることにより救われると感じたのなら、今も昔も意味がある施設だ。そこまでいかなくても何も考えず、無料でぼーっと出来る静かな空間があるのっていいよなぁ。そんなことをグルグル考えているうちに聖歌隊の合唱が始まると。

 また涙が出てきた。

 歌の力ってすごいと思った。私の隣にいた女性は身体に障害がある人のようで、上手く発音できてないし、立つのもやっとのようだ。それでも聖歌隊に合わせて、歌う。人間は昔から神に音楽を捧げ、讃えた。きっと人間の話す言葉では神様に伝わらないんだ。歌詞がハッキリ分からなくても、その響きや気持ちをのせた声は理屈でなく天に、人間の奥底に響く。

 実際、私は歌に導かれて、はるばる北欧まで来てしまったではないか。

 今書いていることは後づけで、その瞬間はいろんな思考や感情がドッと押し寄せてハラハラと泣いてしまった。

 

続きます。