【2010】ぬむるすウプサラ放浪記  4日目(2)

 その後、また街中で友人達へのお土産を買って、再び大聖堂へ。ガイドブックには、大聖堂の中に「宝物博物館がある」と書かれているのだけど、入口がさっぱり分からない。ショップのおばさんに「博物館の入口はドコですか?」と聞いたら「あなたの後ろよ」と言われた。関係者通用口かと思っていた扉は、実はエレベーターで、これを使って上に登ると博物館が見られるということだった。まずショップのレジで入場料を払うと、おばさんにガイド(英語)と懐中電灯を渡される。「まず4階まで上って、それから階段で一階ずつ下りてきてね」と順路を教えてもらって、エレベーターに乗った。扉はスライド式ではなくて開き戸だった。

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へ?懐中電灯?

 言われたとおり4階に上がってみると、とても薄暗い。照明がないわけではないのだけど、古い布を傷めないために、照明を最低限に抑えてある感じだ。なるほど、これはガイドを読んだり展示物を見るのに懐中電灯が必要だ。(なので、写真撮影はOKだったけれど、殆ど写真を撮れなかった。フラッシュを使うのはダメでしょ。)「陰翳礼讃」を読んでいる途中なのはラッキーだったと思う。暗闇の中で底光りする金糸の美しさを体験することができた。谷崎は、西洋は何でも明るくする方向に発展していったと書いているけど、始めから何もかもが明るかったわけではなく、ぼんやりとした蝋燭の光の下で生活する時代もあった。その中、金、銀、宝石を身に纏った王や聖職者がどんなに神秘的で、神々しく見られたかを想像するのは楽しかった。

 見終わって再び地階に降りて、また堂内の方に足を向けた。西日がステンドグラスを明るく照らして美しかった。急に、自分のヘタレっぷりや神経の細さが情けなくなってきて、ちょっと泣いてしまった。これからどうするんだろう?

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  一度ホテルに帰った。今日の夕食はHiJazzへ行く予定なのだけど、その前に明日の移動の準備と、部屋の掃除をしておこうと思った。なぜならそれがこのホテルのルールだから(^^;)。ゴミの分別とか、シャワーの排水溝の掃除とか、床のモップがけをやって、6時過ぎに再び駅へ向かった。

 HiJazzはお食事をしながら音楽を楽しむレストランだ。ステージでは若い人達が楽器をセッティングしているけど、何時から演奏が始まるんだろう?ベジタリアンパスタと、地ビールっぽい何か(名前をメモるのを忘れた)を頼んで、谷崎を読みながら8時過ぎまで粘ってみた。というのは、Coste Apetrea*1が、8時過ぎならばお店に来られるかもしれないと言っていたからだ。しかし・・・パスタの味は良かったのだけれど、決して小食ではない私でも半分くらい残してしまう大盛りっぷりで、胃の方が限界。持ってきたお土産をCosteに渡してもらうよう、店員に頼んでいたところに本人登場!!よかったー、超ナイスタイミング!

 Costeは今(2010.10.29.)、スウェーデンのテレビ局とSONYと組んで、3Dテレビ用のオペラ映画を作っているとのこと*2ゲーテファウストを題材に、今まで誰もやったことがないようなことをするので、技術的な問題が沢山あるけど、とても楽しい、と嬉々と語っていた。11月中には何らかの形になるのではないだろうか。

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Costeと記念写真

 Costeの親友が、東京にUriah Heepを観に行ってるという話になると、「みんな昔の音楽ばっかり聞いてるんだ。」とちょっとご不満そう。「Prog Rockだって、いまだにGenesisKing Crimsonみたいな音を出している。何がプログレシッヴだ」と(^^;)。そのとーりだと思いますー。私のプログレ業界に対しての、ある種の「不信」はそこにある。私は「全てがそうだとは思わないけど、Prog Rockのミュージシャンは、基本的に音楽ファンで、あのバンドみたいな音を出したいって思っている。でももっと若いメタルな人達は、自分の心の中を表現したいって思ってるんだよね。」と返すと、「そうなんだよー」。Costeは若いバンドの音楽も積極的に聴いていて、特にAvenged Sevenfoldが大好きで、ドラムが面白いと言っていた。「でも死んじゃったんだよね。いまMike Portnoyが叩いてるけど・・・」等々、割と自分が聴いている音楽フィールドに近い話がでてくるので、ヘロヘロな英語でもなんとか会話することができた。

 その後、テクニックと表現の話に。「この境界線はとっても細いんだ。巧い演奏と、エモーションが籠もった演奏。この差はちょっとなんだけれど、でも違うんだ。」とにかく「音楽にはエモーションが入っていないとダメなんだ!」という熱い思いはとても伝わった。

 レストランを出る間際、Costeが近くにいた男性をさして「あそこでワインを飲んで食事をしてるのはThomas Arnesenだよ、とても良いギタリストなんだ。」うはっ!Panta Rei*3

www.discogs.com

  あんまりフツーなおじさんなんで、ミュージシャンだとは思わなかった。図々しく握手してもらう(<ミーハー)。

 ホテルに帰って、今日は共有のシャワー室を使った。こっちの方が広くて、排水が良いなぁ。始めからこっちを使うべきだった。でも、ラックに置かれていた物をよく見たら、ボディーシャンプーではなくて、ハンドソープだった(^^;)。

 明日はStockholmへ移動。

10月28日の写真(fotolifeへ移動します)

 

10月29日へ。

*1:Uppsalaが誇る変態バンド、Samla Mammas Mannaの元ギタリスト。ギタリストとして今でも現役

*2:このページに紹介されていましたがすでにリンク切れ http://folkoperan.se/forestallningar/faust

*3:ジャケットが変態で有名な70年代のジャズロックバンド。現在Panta Rei 2.0という名前で活動しているが、Thomasはいない